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2009年1月28日 (水)
Quest for Xanadu 3-6 (終)
Bewitching Moonlight in Deeply Midnight #6
彼女と同じように砂漠の近親者となる。
そう思ったその時、俺の目の前を何かが
通り抜けていった。正面を見ると爆発音が
して、「ディアデビル」は火の海に
飲まれた。あれは薬莢の中に複数の
爆薬が含まれている「拡散弾」だ。
こんな物を使うのはハンターしかいない。
後ろを振り向くと、砂漠の船の甲板から
弾の射出機「ボウガン」を構えた
クルーがいた。彼らは休むことなく、
「ディアデビル」に強力な「拡散弾」を
撃つ。その隙に俺は振り向くことなく、
その船に走り出した。命を脅かされる
心配が無くなったからだ。船から手が
伸びて船の手すりに足をかけると、
船は間もなく走り出した。
「これはこれは。災難でしたねぇ」
手を差し伸べた男が言う。命を張った
という緊張がまだほぐれずにいたが、
その男はあごと鼻の下にヒゲを蓄え、
右目に眼帯をした男はなんとも間延び
した喋り方をして、妙なギャップを
覚えるのだった。その男が手を差し
伸べると、俺を甲板に引き上げて
くれた。甲板には「ボウガン」を
構える二人と、舵を取る者が一人いた。
「この時期のディアデビルは産卵期を
迎えていて、非常に気性が荒いです
からねぇ。それから生きて帰れる
だなんて、あなたもそうとう悪運が
強いようで」
そりゃどうも、と苦笑いをしてその
男に答えた。
「おやおや、ムキになって追いかけて
きますねぇ。彼女の怒りを買って
しまったのでしょうか」
男は船尾から拡散弾を撃つ二人の
ハンターに言った。
「この風なら追いつかれる事はあり
ませんが、弾薬調合も含めて、間を
空けないように撃ってください」
船にいるクルーはリーダーと思しき、
です、ます、ねぇ調のその男。歳は
最年長で年齢は四、五十代位だろう。
その周りにいるのは俺よりも年上の
青年たち三人。彼らはハンターズギルド
直属のギルドナイトの出で立ちだが、
リーダーだけは「フルフル」素材の
ような黒いコートを上から羽織っている。
「了解」
ガンナーの二人が切れの良い返事をする。
「さて・・・。あなたは砂漠のど真ん中、
しかも夜に何をしていたんですか?
依頼書の控えを見せてください」
砂漠の黒い嵐が迫っている状況にも
拘らず、この男はなんと肝の据わって
いることか。はたまた状況を飲み込めて
いないだけなのか。俺は話を逸らそうと
追いかけてくる「ディアデビル」の
話をするが、心配要らないと言われて
しまった。
「ほら、あのように」
「拡散弾」の攻撃により、奴は地中へと
潜っていった。それから何の攻撃も
無かったので、彼らは見事に奴を
撃退したのだった。唖然と見ている
俺に対し、男は腕組みをし鼻息を
荒くした。
「どうなんですか?」
ギルド本部に通報されて、後々面倒な
事になっても困るので、ここは素直に
持って居らず、仲間と一緒にでここまで
来たと告げた。
「それはいけませんねぇ。下手をすれば、
あなたは密猟未遂で本部にしょっ引かれても
おかしくない状況なんですよ、
と言いたいところですが・・・」
男は肩をすくめて、半笑いでこう
言った。
「我々の目的とは違うし、事後処理が
面倒なので、今回は不問します。
まぁ、過去に黒ディアブロスの密猟を
単独でやった人がいるから、ちょっと
気にはなったんですがね。ただあなたが
一方的にやられていた状況でしたから、
密猟とは言えないでしょう」
周りのギルドナイトが笑い出した。
エリートぶった雰囲気が一線画した
感じで腹立たしかったが、助けて
もらった事に変わりは無かった。
「すいません、冗談ですよ。気を
悪くしないで下さい」
と、男も半笑いでそう言うのだった。
「まぁ、ジオ・ワンドレオに着い
たら、お互い他人になりましょう。
だから、我々もあなたの事に深入りは
しないし、逆も然りです。ただね、
個人的にあなたに聞きたいんですよ。
あそこで何をしていたかを。
お仲間がお亡くなりになったとか」
俺は彼らに「ザナドゥ」の一部始終を
話した。そこには遺跡があり、
地下探索をしたが、巨大な蛇に
襲われ仲間が殺されてしまい、
俺だけ遺跡を脱出した、と。だが
「キングサボテン」の話はしなかった。
俺が持っている「キングサボテンの花の実」を
没収されたくなかったからだ。
「その相方さんは、コンパスを持っては
いませんでしたか?」
確かに時々、ラクダに乗っていた時も
何度か確認していた。もちろん俺は
方角を見ているものかと思っていた。
「それは秘境へのコンパスという、
持つ者を特定の地域へ誘う道具です。
特定の磁場を感知して反応するコンパス
なのですが、彼女はどのようにして
そのコンパスを手に入れたのでしょうね。
判りかねますが・・・」
あの有名なトレジャーハンター、
I・ショーンズ博士の家系の者だと
言った。
「いや、彼はショーンズ家では一番の
変わり者で、宝探しをしていたのは
I・ショーンズだけです。他は代々、
自国の家臣を務めているようなお堅い
一族ですよ」
そうだった。彼女自身、自分の気持ち
以外は嘘偽りだと言っていた。
「まぁとにかく。あそこはパワー
スポットと呼ばれる特殊な磁場で
守られている場所で、向こう側から
招かれない限り、常人では行き着く
ことが出来ないのです」
それで俺が後ろを振り向いた時に、
「ザナドゥ」が消えてしまった
という訳だったのか。
「パワースポットと呼ばれるだけ
あって、なんでも竜を意のままに
操る技術も確立していたとか、
いないとか。でもね、記録には
こうあります。キングサボテンが
栽培できるほどの特殊な環境下
だったのが災いして、その実から
生成できる麻薬で、国は滅びた
んです。病気の人もたちまち
歩き回る、って言い伝えられて
いますが、あれって麻薬で気分だけ
高揚した人たちが増えすぎて、
内乱が起こったようなんです。
薬を巡って人々が殺しあうのですよ。
それで国ごと全滅。温室育ちって
言うのも、些か問題があるよう
ですねぇ」
その麻薬がこのポーチの中に
あるとは、口が裂けてもいえなかった。
「それに、フィールドの中である
ことによって、花粉がいたずらに
外に出る事もなかったんです。
ご存知でした?その花粉が
モンスターたちの・・・、特に
セクメーアの女神さんと呼ばれて
いるディアデビルを興奮させて
しまう作用があることを」
実を生成して麻薬ができるのならば、
そういうのに敏感なモンスターたちは
麻薬成分が少ない花粉でも過剰に
反応してしまうという事なのか。
もしかしたら俺の衣服に付いていた
花粉に反応して、「ディアデビル」が
現れたのかもしれない。だから
「キングサボテン」の麻酔薬が
滅多にお目にかかれない薬と
呼ばれるのも頷ける。出発前、
女神の加護の話も、あながち
嘘ではなかったのかもしれない。
「おやおや、眠そうですね」
リーダーの話を聞いていると、
この人の話は長く、うとうとと
眠気が襲ってくる。
「九死に一生を得たわけですから、
緊張の糸が切れたのでしょう」
なんて前向きな人なんだ。
「日の出にはワンドレオに着きます。
それまでおやすみ」 俺はリーダーから毛布をかけて
もらい、その場で泥のように眠った。
次に目を覚ましたのは、「ジオ・ワンドレオ」の
街の出口だった。ギルドナイトたちに
置き去りにされたらしい。街の自警団の
リーダーに叩き起こされた。結局、
あのギルドナイトたちは何しに
砂漠に来たのかは結局分からず
じまい。俺はその足で宿に戻り、
しばしの安息を求め、再び寝に入った。
それから俺は事後処理に追われる
事となった。オリビアの捜索願を
ギルドに提出した。これでオリビアは
行方不明者として、大陸中のギルドに
情報が流れる。しかしこれは後日
分かった事なのだが、彼女は元々
ギルドに登録されていない人物
だったのだ。ということは、名前
すら俺に嘘だったのか。念の為、
彼女の泊まっていた宿を探そうと
思っても、何処に泊まっている
のかすら、分からない状況だ。
姿の消し方も只ならぬ物を感じた。
そんなオリビアからもらった最初で
最後のプレゼント。「ザナドゥ」の
合鍵をどこかでなくしてしまった
らしい。ポケットに入れていたので
ギルドナイトたちに取り上げられた
可能性は低く、一番動きまわった
事を考えればやはり「ディアデビル」と
の戦いの時に落としたのだろうか。
今更探す気になどなれず、唯一残った
土器の首飾り。俺はこいつを、
オリビアの形見として今でも首から
下げている。
そして温暖期の眠れぬ夜・・・
「そっか。オリビアさんって、
初恋の人だったんだよね・・・。
その後あなたはどうしたの?」
一度「ドンドルマ」へ戻って、
「調合の神」に内緒で鎮痛剤を
調合してもらったんだ。後は
知っての通り、故郷「ルプス村」に
帰って母さんに投与したけど、
手遅れだったって話。
「そうだったよね・・・」
俺は何も出来なかったけど、その
過程で大きくなれたんだ。だから
後悔はしていないし、母さんも
それを望んでいたからこそ、旅立つと
決めた時、背中を押してくれたんだと
思う。
「いいお母さんを持ったね」
今でも自慢の母親だよ。
・・・ああ、もう夜が明ける。
あとがき
小説「Quest for Xanadu」は
「Monster Hunter」の
二次作品ではありますが、製作者側の設定に
著者独自の創作脚色があり、一部モンスターや
アイテム等はゲーム中に登場しません。
SPECIAL THANKS
飛橘さん (穂の歌猟団) オンカイさん (穂の歌猟団) MASAさん (穂の歌猟団) Seliceさん (穂の歌猟団)
星々を駆ける小さな君
・・・そして、ご愛読頂いたあなた。
ご協力、ご愛読ありがとうございました。
~EPILOGUE & PROLOGUE~
眠れない温暖期の夜より、遡ること半年前。
穂の歌猟団の猟団部屋にて。
「ノーチェス団長、私書箱にうちへの
入団届け入っていましたのでお持ちしました」
エメラルドグリーンの長い髪をなびかせて、
猟団執務室に現れたのは秘書を兼務する
弓師のセリスだった。
「セリスさん、いつも悪いですねぇ」
「いえいえ。私に出来る事でしたら、
何でも仰ってください。それでは、
失礼します」
にこっと微笑んだセリスが一礼し去ると、
ノーチェスは入団届けを開封し、書類に
目を通す。猟団拡大の為、大抵の
入団希望者には入団の決裁をするのだが、
一瞬それをはばかった。
「オリビア・ニューマン・ジョンソン
だと・・・」
そして同封されていた一通の手紙が落ち、
それを拾い上げて目を通すと、こんな
内容が書かれていた。
「訳あって貴団に入団させてもらいたい。
入団の是非を問う。」
と、その時だった。執務室のドアが開き、
見覚えのある出で立ちの女が現れた。
「久しぶりだな、ノーチェス。ずいぶんと
立派になったものだ」
「オリビア・・・」
彼の心中は複雑な思いが交錯していた。
彼女に殺されかけた憎しみや、一年振りに
再会出来た嬉しさ。しかし、あの死地で
何故生きているのか。
「あの時、死んだんじゃなかったのか」
遺跡を守る巨大な蛇とオリビアが対峙して
いた光景が、瓦礫の隙間からのぞくしか
なかったノーチェスの脳裏で色濃く甦る。
「私のノーブルフレグランスで寝かし
つけた後、地下水脈に飛び込んだのだ。
幸い、遺跡の外れの井戸に出る事ができてな」
「でも、砂漠からは出られないはずじゃ?」
「それも君が残してくれた荷物運搬用の
ラクダが居たから、砂漠を脱出する事が
出来た」
黒いディアブロスに襲われた時、かろう
じて一頭のラクダは難を逃れていたよう
だった。そしてノーチェスはあの時、
ヒゲ眼帯の男に言われた言葉を思い
出していた。
「そうとう悪運が強いようだな」 精一杯の反撃も、彼女の前では意味も
無く、弾き返されてしまった。堪らず
ノーチェスは口を開いた。
「俺を殺しに来たのか?」
「いいや、それはない。だが、誰しも
目的に向かって行動を開始するもの
だろう。私も目的があって猟団に
所属したいのだ」
頑として胸を張り、微動だにしない
オリビア。ノーチェスは間を置き、
息を吐いた。自我を押さえ込み、一猟団長
としての顔に戻る。
「目的を教えてもらえませんか?」
「それは出来かねる」
ノーチェスは深いため息を吐いて、
立ち上がった。
「ならば、あなたの入団は認めません」
しかし、オリビアは眉一つ動かさず、
起立の姿勢を保っている。
「と、言いたいところですがね。生憎俺も
創始者の飛橘(ふぇいじゅ)さんから
お預かりしている猟団なので、あなたを
拒む理由はありません。あなたの入団を
許可します。今日からオリビアさんも
我々の仲間です」
ノーチェスは机の中から数枚の書類を
取り出し、彼女に渡した。
「本当は入団手続きが終わってから
お渡しする、猟団内における規律や
生活態度をしたためた書類なのですが、
先に渡しておきます。それでは、
良き猟団生活を送ってください」
ノーチェスは不機嫌そうに定型句を
吐き出すと、再び椅子に座って未処理の
書類を整理し始めた。
「ノーチェス、感謝する」
そう言って、オリビアは執務室を後にした。
to be continued・・・
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(更新 2009年4月11日 (土) 19時56分) / |
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2009年1月22日 (木)
Quest for Xanadu 3-5
Bewitching Moonlight in Deeply Midnight #5 目が覚ましたのは、妙な地鳴りだった。俺は オリビアに殺され、ついに地獄に来てしまった のか。母よりも先に死ぬなんて。なんかもの すごく怒られそうで、とても嫌な気分になった。 身体を起こすと、目の前にはカンテラが置かれて おり、どうやらここはさっきの宝物庫のよう だった。どうやら俺は殺されずに済んだのだ。 しかし、オリビアの姿は無く、地鳴りは止まない。 何処からその音がするのだろう。俺は宝物庫の 入り口に戻ってみた。なんということだろう。 入り口が塞がれてしまっていた。隙間から かろうじて石像の広間は見えるのだが、 そこでオリビアが槍を構えて何かと戦って いる様子だった。俺はオリビアの名を叫んだ。 彼女はそれに気付き、こちらを向いた。 しかし、巨大な何かもそれに気付き、 体当たりを仕掛けてきた。轟音と共に、 俺はその場でよろめいた。落ち着くと、 再び外の様子を伺った。なんとそこには、 巨大な蛇の頭が大きな口をあけ、俺を 威嚇しているではないか。 「こっちだ、木偶の坊」 オリビアが叫ぶと、蛇がそちらのほうを 向いた。その瞬間、甲高い音と物凄い 閃光が駆け抜ける。しかも光り方が 通常の閃光玉よりも長く、強く光っている。 巨大な蛇はもがき苦しみ始めた。 「ノーチェス」 オリビアが崩れた石像の間から顔を出 した。俺は怒りの念を彼女にぶつけ たが、それよりも隙間から手を伸ばし てきた。 「受け取れ」 それは土で出来たリングで、紐が 通っている。それと形状は違うが、 「水門の鍵」に素材が似た棒。俺は それを受け取ると、何故だ?と尋ねた。 「生きろ」 俺は、君と一緒に戦う!と強く訴えた。 「生きろ!お母さんの為に!」 巨大な蛇が意識を取り戻したよう だった。俺は彼女の背中を、暗く狭い 穴から見ていることしか出来なかった。 「オリビアァァァァァァ!」 次の地鳴りで岩が崩れ、俺とオリビアは 断絶された。そして涙が出てきた。 何も出来ない無力さ、オリビアへの 複雑な思い、何より初めて愛した人 だったからだ。小タル爆弾さえあれば、 ここを抜け出し、彼女と一緒に戦えた はずだった。もちろん殺されるかも しれない。それでも俺は彼女を 信じていたかった。たくさんの嗚咽と 共に、俺は彼女の言葉を思い返す。 母の為に生きよ、と。俺は自分の 目的を思い出した。いや、彼女に よって思い出された。いつまでも 甘えてはいられない。まずはここ から出なければならない。すっかり 閉じ込められてしまったが、この ような場所には大抵通気口がある ものなのだ。もしもの時の脱出口 にも使える。カンテラで辺りを 見回すと、上のほうに扉があった。 その錠はさっきの「水門の鍵」が 有効のようで、鍵穴に挿すだけで 簡単に開錠できた。トンネルが 続き、その先に薄暗い明かりが 差し込んでおり、そこにロープが 一本垂れ下がっているのを見つけ た。間違いなく外だと確信し、 俺はロープをよじ登った。 外に出ると、間もなく夜明けの ようで、うっすらと東の空が 明るくなっていた。眼下には 奈落の崖が広がり、その反対側 にはせり出た遺跡が望める。俺は 地下を通って遺跡の反対側に やってきたようだった。あたりは 「キングサボテン」が所狭しと 生えていた。今の時期はちょうど 花を咲かせ、受粉する季節のようで 花畑となっているが、もしかしたら 古代人たちが「キングサボテン」を 栽培していたのかもしれない。 現代技術では「キングサボテン」の 栽培は不可能とされているが、 恐らくここのサボテンは、保持して いる水分が「命の水」によるもの なので、ここまで大きく育つのだと 思った。そして「キングサボテン」の 花の実には強い麻酔を含んでおり、 しかも「ゲネポスの毒牙」の 麻痺毒ように副作用が残らない事から、 至高の薬の一つとして数えられている。 俺は「キングサボテン」から花の 実を十個ほど採取した。採りすぎは 狩猟規定に違反してしまうからだ。 それらを小袋に詰め、腰からぶら下げた。 そして、強い日差しが砂漠を 照りつけた。崖越しに見る日の 出だった。一度中へ戻る必要が あるかもしれない。外に居たまま では熱にやられてしまうからだ。 縦穴を降り、新しいルートを 発見したのでそちらへ進む。 すると、つり橋の掛かった崖に 出たのだ。そのつり橋は遺跡の 中へと続いている。このルートは 「キングサボテン」畑へ続く ルートのようだ。農夫たちがこの 道を通ってサボテン畑へと向かって いったのだろう。つり橋のロープは 老朽化しており、今にも切れそう だったので、ゆっくりと渡ったが、 俺が渡りきろうとしたところで、 ロープが持たず二つに切れてしまった が、間一髪、遺跡に辿り着く事が でき、俺はそのまま上を目指し、 無事に遺跡から脱出する事ができた。 これも全てオリビアのお陰だが、 彼女は今どこにいるのだろう。 ラクダのレオの元へ戻ると、 オリビアが乗ってきた一頭と 積荷用の一頭が残されたまま だった。やはり戻ってきては いなかったが、レオの鞍に 一枚の手紙が挟まっていた。 ノーチェスへ、と宛名書きが されている。オリビアのもの だと思って間違いないだろう。 「ノーチェスへ 今は君の寝顔を横に、この手紙を こっそりとしたためている。 この手紙を読んでいるという ことは、私はここにはいない ということだ。もともと、君か 私のどちかしか地上には戻れ なかったという事だ。例え君が この手紙を手にしても君の事を 怨みはしない。むしろ、その 資格が無い。君を殺そうとして いた事実には変わり無いからだ。 私は今まで様々な人間を殺めて きた。任務で仲間になった ハンターを口封じで殺した事も ある。もちろん、君のことも 殺そうと思えばそれもできるの だが、私にはできない。今が旅の 途中だからではない。年下の君に、 私は間違いなく魅かれていた からだ。血にまみれた私が、 唯一自分を確認できる。君に 伝えた情報は殆ど作り話だが、 この気持ちに嘘や偽りが 無かった事は信じて欲しい。 私は元々、ある使命を担って この地へやってきた。だが私は その任務に失敗し、砂漠の 近親者として骨を埋めること となってしまった。目的は 聞かないほうがいいし、君には 口が裂けようと話す事はない。 だから君の為にも、この事は 忘れて欲しい。もし、ジオ・ ワンドレオで仲間の募集が 上手くいけば、君を巻き込む 事はなかったのだが、あんな システムがあったというのは 私の誤算だった。君とは もっと別の出会いをした かったと思う。 最後に聞きたい事とがある。 こんな私を怨んでいるか? 怨んでもらって構わない。 私は君に許して欲しいとは 思っていない。許してもらえ るとも、思っていない。 だが・・・もし再び生きて 会えた時には、私が使命を 全うした時には・・・。 その時には私の事を好きに してもらって構わない。 ノーチェス、良き狩りを。 オリビア・ニューマン・ジョンソン」 オリビア。俺は涙が止まらなかった。 複雑な思いが交錯し、それでも オリビアが愛おしくて・・・。 泣き疲れた俺は、遺跡の外にあった 廃屋へ入り、そこで昼をやり過ごした。 洞窟を歩き通したせいもあり、 直ぐに寝に落ちる事ができた。 日の入りの時間になり、目を 開けようとする。隣にオリビアの 寝顔を思いながら。全てが夢で あるようにと、切ない思いを 込めながら、恐る恐る。しかし、 そんなことで彼女が戻ってくる のなら、母の病気も嘘にできる ような気がした。 ・・・しっかりと目を開けて、 前を見よう。砂漠のど真ん中に 取り残された。今回の旅は 後半分。この砂漠を出たら、家に 帰ろう。折れ掛かった気持ちに 添え木を当てて、俺は生還に のみ執着する事にした。 当たりはすっかり暗くなり、出発の 準備をした。失った「香駿」の 変わりに、愛刀「クロームデスレイザー」を 再び背負い、主人を失った ラクダを引き連れ、夜の海に 歩を進めた。ザナドゥを後に してしばらくすると、砂嵐に 巻き込まれた。視界が完全に 遮断し、レオたちの足も完全に 止まった。だが次の瞬間、 すっかりと晴れ渡った星空の 下に出る。一体なにが起こった のか。さっぱりわからないで 辺りを見回していると、後ろに あったはずのザナドゥが消えて なくなっているのだ。何故なのか 理解できなかったが、今更用は ないので戻る事はない。俺は 再び前を向き、何もかも振り 返らないつもりでいた。しかし、 砂漠の女神は俺の事をただで 返してはくれなかった。 レオの身体を通じて感じる振動と 共に、俺はただなら気配を感じ 後ろを振り向いた。砂が俺の二倍、 三倍は膨れ上がっているでは ないか。咄嗟に俺は何かが飛び 出してくると感じ、レオから 飛び降りた。次の瞬間、レオは 砂と共に空高く舞い上がった。 他の二頭は巻き込まれたのかすら 分からない。恐らく砂に飲み 込まれたのだろう。山盛りの 砂はどこかへ消えてしまったが、 次の瞬間地面の下から押し上げ られた。俺は大きく打ち上げられ、 空を舞った。何とか着地を決め、 気になるような外傷は無かったが、 その砂より現れたのは、漆黒の 鱗と、厳つくねじれた二本の角。 燃え上がるような紅玉の瞳、 出会ってはいけない黒い嵐 「ディアデビル」だった。しかも 口から黒い息を吐いている。 退化した火炎袋から炎は出ないが、 これは奴が怒っていたり、興奮したり すると見られる現象、と文献に 書いてあった。出会ってそうそう ご機嫌ななめの「ディアデビル」に 出くわすとは、そうとう運が無いと 思っていいだろう。やはり俺は 砂漠で死ぬのか。とりあえず俺の すべき事は、ある程度ダメージを 与えて撃退する事。しかし、狩猟用の 携行品はほとんどラクダの荷物と 一緒だったので、かろうじて 持っていた滋養強壮「回復薬グレート」と スタミナ回復「元気ドリンコ」の ビンが二本ずつ。俺は抜刀し、 「クロームデスレイザー」を構えた。 しかし奴は直ぐに地中に潜り、姿を くらましてしまった。だが、 あんなに興奮して襲ってきたので、 このままどこかへ行くというのも 考えづらかった。とすれば、 先程と同じように、俺の真下から 現れて突き上げてくるに違いない。 剣をしまい、すぐさまその場から 逃げ出した。すると次の瞬間、 俺の予想は見事に的中した。 立っていた場所に「ディアデビル」が 飛び出してきた。間一髪奴の急襲を 逃れ、俺は足の下に潜り込んだ。 走った勢いで武器を出し、抜刀斬り から薙ぎ払い攻撃に繋げた。足を 切るが、奴は息を荒立てて、左足で 地面を蹴る。そして再び地面に潜り、 姿を隠す。恐らく直ぐに浮上すると 思うので、再び剣をしまうとその 場から離れた。間髪入れず、地面 から飛び出してきて、攻撃を免れる 事ができた。しかし、直ぐにこちらを 向き直すと、大きく羽を広げて こちらに向かって走ってきた。 奴は飛竜と呼ばれているが、基本的に 飛行はしないのだそうだ。その分 足腰は強靭で、攻撃力も他の飛竜より 群を抜いているの出そうだ。広大で 隠れるところが無い砂漠において、 奴との遭遇が死を意味することが よく分かる。基本的には直線上に 立たなければいいので、俺はひたすら 横へ逃げた。しかしいくら横へ 逃げても奴が俺を追撃してくるのだ。 巨大な身体を支える足腰が強靭だから こそ、できるのだろう。 今までの飛竜とは比べ物になら ないほどの強敵だ。俺が取った策は、 ぎりぎりまで引き付けて頭から飛び 込む事だ。このまま走っていただけは、 奴の足に巻き込まれてしまうのは 必至だったからだ。迫る巨体の影に 入り、タイミングを見て地面を蹴り、 ダイビングして空を飛んだ。間一髪、 奴の突進から逃れると一陣の強風が 突き抜けるのだった。勢い余って、 落ちた衝撃を逃しきれず、砂の上を 数回転してしまった。口の中に砂が 入ってしまい、出来る限り吐き出す。 そして奴を見やると方向転換をして きて再び突進をしてこようとする ではないか。のんきの砂など吐いて いる余裕など無い。「ディアデビル」が 走り出すのと同時に、俺も横に走り 始めた。ダイビングなしでやり過ごす と、そのまま奴の後ろを取って、 剣を抜き斬りつけた。「ディアデビル」は 振り返りざまだったが、俺は尻尾と 足にダメージを与える事ができた。 すると何を思ったのか、奴は砂の下に 穴を掘って潜り始めたのだ。なんか 嫌な感じがすると思いその場から 離れたが、出てきたときには砂が 爆発するように物凄い勢いで飛び 出してきたのだ。出てくると同時に、 足の裏を砂に擦り付け、口からは 黒い煙が出ている。これは退化した 火炎袋が怒りによって働いていると 聞いた事がある。どうやら俺は奴を 怒らせてしまったらしい。プライドが 高く、敵からの攻撃に対して怒りを 見せると聞いていたが、ここまで 短気とは思わなかった。 「ディアデビル」は俺を視界に 捕らえると、怒涛の勢いでこちらに 走ってくるではないか。走るスピードが さっきとは比べようもないほど速い。 息を荒げて走ってくる奴に対し、それから 横に逃げる。しかし俺の姿を追って 徐々に横に伸びてくる。完全に俺に 体勢を合わせてきているので、俺は もう逃げようがないことを悟った。 そして彼女の後を追うことを覚悟した。 3-6(終) ⇒ http://blog.daletto.com/article/qdamfve700/20090128.html
検索タグ: MHF モンハン 二次創作小説 ノーチェス たがーる 多賀基宏 Noches・A・Verano オリビア
(更新 2009年4月11日 (土) 19時51分) / |
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2009年1月14日 (水)
Quest for Xanadu 3-4
Bewitching Moonlight in Deeply Midnight #4 今宵は満月。妖しく輝く月光が「ザナドゥ」を 照らし出している。あたりは不思議と静かで、 恐怖すら感じた。それをオリビアに言うと、 このあたりは稀に見るパワースポットだと 言った。常識で考えれば、砂漠のど真ん中で 文明が発達するなど考えにくく、更に モンスターの多い地域という特色も あるので、このあたりに流れるパワーを 流用し建築。長期に渡る安寧秩序を 獲得してきたと思われる。しかし、何らかの 原因でパワーバランスが崩れ、遺跡と なった。これまで何人たりとも近づけ なかったのは、やはりパワースポットに 流れる力が作用して、近づけさせなかったの だろう。ここまで説明されてもいまいち しっくり来なかったが、要は来るべき手順を 踏んでくる事ができた、ということらしい。 遺跡は半分以上砂に埋もれている状態だったが、 埋もれかかった窓から中に入れるようだった。 ラクダの手綱を自生している木に結わえ、 装備を整えた。俺はしばらく出番の無かった、 叔父から貰った太刀「香駿」を、オリビアは いつもの「ノーブルフレグランス」を 背負った。オリビアを先頭に、窓から 遺跡の中へと入ると、すぐさまカンテラに 明かりをつけ、奥へ奥へと進んでいった。 廊下を進んでいくと、月明かりが差し込む 通路へ出た。まだ埋もれきっていない 場所があるのかと思い、俺は窓から外を 覗き込むと、眼下には奈落と言っても 等しい位の巨大な穴が広がっていた。 ここの通路は崖からせり出しているのだ。 だから砂に埋もれることなく、月の光が 容易に入ってくるのだと理解できた。 一度、建物の上層にある玉座と思しき 場所に出た。 「この辺りには巨大な地下水脈が流れて いる。だから地下への入り口が必ずある はずだ。それを探して欲しい」 地下水脈の入り口。宝探し初心者の俺に そんな事を言われても何処にあるのか 検討などつくはずもない。ただ、地下と 言うのならまずは地下へ行く事が優先 されるだろう。 「いや、この国の治水管理は位の高い 僧侶が行っていた。それ関係には必ず 王家も参列する決まりになっている。 何せ、ザナドゥの水は命の水と名高い ほど神聖な物なのだからな」 俺が初め聞いていた伝説とは違うが、 オリビアが伝説の「ザナドゥ」に関して 確信的な知識を持っているのには驚いた。 一緒に居た時はそんな話は一切 しなかったのに。 「言い伝えによれば、毎年行われた 治水式には、関係者以外はこの城の 二階層部には何人たりとも寄せ付け なかったそうだ。だから、地下へ降りる のは二階層からだと確信した。そのような 入り口があるとすれば、一般人が 普段立ち入れない場所」 ・・・私室とか?と俺が言った。 「おそらくな」 オリビアは二つの玉座の後ろにある 入り口を進んだ。予想通り、プライベート ルームがそこにはあった。国王とその妃の 部屋が分かれていたが、オリビアは妃の 部屋に入っていった。それに反し、俺は 国王側の部屋を調べに入ろうとする。 「責任者は代々王妃と決まっていたんだ。 だからこちらを手伝ってくれ」 国王側に入ろうとした俺を引き止め、 オリビアは王妃側の部屋を物色し始めた。 壁を触って見たり、叩いて見たり。 「触ったり叩いたりする事で、何かが 違う事に気が付く。君もやってみるんだ」 オリビアのまねをしながら、「香駿」の 先の部分で壁や床を入念にチェックする。 長年放置されていたせいで、すっかり 砂だらけとなってしまった部屋だけに、 叩くと砂が良く落ちる。しかし一箇所 だけ、小さな穴が開いており、細い棒 なら奥まで入りそうなくらいのものだ。 俺はオリビアを呼ぶと、この小さな穴の 事を報告した。 「ノチェ。これを持っててくれ」 カンテラを渡され、オリビアが見える ように上から明かりを照らした。オリビアは 穴に息を吹きかけて、穴の中に詰まった 砂を払う。 「とうとうこいつの出番か」 メイルと首の間に手を入れて、胸元から 何かを手繰り寄せていた。それはオリビアが 大事にしていた鍵だ。そろそろその正体を 教えてくれてもいいんじゃないか? と言うと、オリビアは言った。 「これはな。水門の鍵といって、伝説の 風翔龍クシャルダオラの甲殻から削り 出されて作られた鍵だ」 オリビアは穴に鍵を差し込み、回す。 しかし何も起きず、沈黙だけが支配した。 ・・・オリビア?不安そうに彼女に 尋ねるが、彼女の眉一つ動かさない 表情を見ると、やはり何らかの確信が あるのだろう。 「どこからか音が聞こえないか?」 音?耳を澄ませていると、確かに壁の 奥から何かの作動音が聞こえてくる。 そして、カチッと言う音と共に、 オリビアは鍵を抜いた。石と石の間に 指を入れ、壁だと思っていた扉が 重厚な音を立てながら、前に吸い 込まれていく。これが地下水脈への 入り口だった。 「ノーチェス。つっかえ棒になる物は ないか?」 ちょうど衣服などを引っ掛ける鉄の スタンドがあったので、それをオリビアに 渡した。何に使うのかと思ったら、 それを倒して壁と扉の間に倒して、 閉まらないように支持棒として利用した のだ。 「この扉はな。冷気に敏感な金属を 錠として利用しているんだ。だから、 私がこの鍵を差し込むとクシャルダオラの 冷気が発動して、錠全体を冷やし金属を 凝縮させる。凝縮、つまり小さくなる から錠が外れるのだ。だから、さっきの ように支持棒をしておかないと、 冷やされた金属が温まって元の大きさに 戻ってしまう。閉まった時に錠が元に 戻っているから、出るに出られなく なってしまうと言うわけだ」 なるほど。いつも感心させられて ばかりだ。オリビアのトレハン知識は 伊達ではなかった。 俺たちは石造りのトンネル階段を下へ、 下へと降りて行く。それからしばらく 進むと、視界が開けて巨大な地下空洞 へとやってきた。下からは大量の水が 流れている音が聞こえる。やはり オリビアの言った地下水脈というのは 正しかった。階段を下りるとその 正面には、人を模した巨大な石像が 両端に鎮座しており、奥に向かって 延々と並んでいるのだった。どの 石像も乳房がかたどられており、 どうやら女性を象徴しているようだ。 石像の間を進んでいくが、石像は ところどころ崩れ落ちている。やがて 四角錐の祭壇まで行き着いた。錐の 頭頂部は人ひとりが立てるほどの スペースとなっており、そこで 治水の儀式でも行っていたのだろうか。 「ノチェ、カンテラを」 言われるがままに彼女にカンテラを 渡すと、そのまま祭壇に登っていった。 俺も彼女の後に付いて階段を登る。 祭壇の四隅に腰の高さくらいの燭台が あったので、オリビアがそこに火を 灯す。俺は、これだけ?と尋ねた。 「いや、どこかに宝物庫があるはず なんだ。もしかしたら、この祭壇が 何か隠しているかもしれない」 オリビアは不意に床を調べ始めた。 手探りで、先ほどの鍵穴でも探そうと 言うのか。俺もしゃがもうとしたが、 人が二人立っているだけでも狭い スペースだ。俺はオリビアを尻で 祭壇から押し出してしまった。 「ば、馬鹿」 祭壇を滑り落ちるオリビアだったが、 幸い燭台に捕まって落下は免れた。 俺は懸命に謝りながら、彼女に手を 差し伸べて引き上げた。これは絶対に 怒られる。そう思っていたのだが、 彼女は別のことに意識をやって しまっていた。 「この燭台・・・、動くな。他の 台が動くかどうか試してみろ」 オリビアの言う燭台はぐるぐると 回る。しかし、他の燭台は回らない。 そしてオリビアは回る燭台を引っ張り 抜いて見た。するとどうだろう。 ちょうど男のこぶしが一つ入る くらいの小さな穴があった。俺は 燭台を渡され、オリビアはその穴に 明かりを照らした。 「道は開けた」 にんまりとするオリビア。さっきの 鍵を取り出して、その穴の中に差し 込んだ。どうやらその奥に鍵穴が 隠されていたようだ。鍵を回すと、 しばらく沈黙の後、祭壇のどこか から音がした。俺は祭壇を降りて、 扉を探した。祭壇の下部は階段を 挟んで四箇所窪んだ箇所があり、 よくみれば扉に見えなくも無い。 一つずつ押して扉が開くかどうか 試して見た。すると、右から二番目の 窪みが扉であることを発見した。 俺はオリビアを呼び、さっきの燭台を 支持棒として挟み、扉が閉まらない 様にした。そして再び狭く細い階段が 下へ、下へと続いている。トンネルを 抜けると、川が流れており、川沿いに 細い道が伸びている。どうやらここが 遺跡の最下層と思われる。道は続いて おり、その途中で橋が掛かっていた。 俺たちはその橋を渡り、再び登り 階段のトンネルへと入っていった。 何処までも続く階段を登りきると、 そこには扉があった。どこかで 見覚えのあるような扉だったが、 今度は鍵穴が直ぐに見つかった。 オリビアはそこに鍵を挿すと、 回して錠が冷え切るまで放置。 開錠音がすると、重い扉を開けた。 扉の先は、再びどこかで見た風景。 人を模した巨像が並んでいる。 「そうか・・・。川を挟んで向こう 側には治水祭壇を置き、こちら側に 財宝を隠したというアシンメトリックか」 さっきの像と比べると、乳房がなく、 顎からは一本の棒のように延びた ヒゲがかたどられている。 「水と女の関係が密接している。 だから、王妃の部屋から地下水脈の 道が隠されているわけだったんだ。 赤ん坊を宿した時の羊水。そして海が 母と比喩される事を考えれば、女と 水は切っても切れない縁だな」 石像の奥には、巨大な壁が立ちはだ かった。しかし、そこには入り口が ぽかんと、口を開けているではないか。 俺たちはその入り口を潜ると、 中は黄金に輝く金銀財宝の光景が 目の前に広がっていた。俺は、 これでオリビアの一族を救う事が できるね、と言った。 「一族・・・確か君にはそんな 話もしたな」 オリビアの様子がおかしい。 「私は最初に言ったよな。君は とんだお人好しだと」 振り返るオリビアは眉一つ動かさ ない、いつも冷静なオリビアだったが、 目に殺意がこもっているのは分かった。 「私の話はどこかで聞きかじってきた ような話だぞ。これからはまず人を 疑う事だ」 そしてオリビアは背中に背負っていた 「ノーブルフレグランス」を構える。 花に仕込まれた毒刺が伸び、俺の 心臓を狙う。俺もすぐさま背中の 「香駿」を抜いた。 「だが、君に『これから』は無いがな」 オリビアは眉一つ動かさない。俺は こんなにも心臓が破裂しそうなくらい 脈打っているのに。 「私とやるのか?」 柄を握る手に力がこもる。 「君に私は殺せない。なぜならば、 君は人を殺した事がないからだ」 うるさい!俺はオリビアを怒鳴り つけた。しかし、彼女は淡々と 喋り続ける。 「だが私は、その訓練をされて いるし、今までもたくさんの 人間を闇に葬ってきた」 何故こんな事を・・・と彼女に尋ねた。 「悪いな。それは言えない」 すると、オリビアは咄嗟に突きを 繰り出してきた。正確に俺の心臓を 打ち抜きに来ている。一時後退したが、 それでもリーチの長い武器なので、 距離を取れば取るほど、こちらが 不利になる。何とか懐に入り 込めれば勝機があるのだが。 「逃げても無駄だぞ。この先の 扉の鍵は、私しか持っていないの だからな」 そんな事は分かっている。それに、 彼女ほどの手練れから容易に 逃れられない事も。オリビは 巨大な花の盾を構えながら じりじりと迫ってくる。宝物庫の 狭い通路では、明らかに槍の方が 有利だ。ならば、その花を叩っ斬る しかない。己のうちから湧いて くる恐怖と向かい合い、静かに 押さえつける。何も考えずに、 オリビアに意識を集中させる。 「そこだっ!」 確かに武器は狙ったのだが、 それよりもこちらがやろうとした事を 悟られていたせいで、オリビアの方が 一枚上手だった。縦斬りで上から 武器を両断しようとしたのだが、 間一髪のところでオリビアが後ろへ 下がる。全霊を込めた俺の一撃の 後と、失敗してしまった後の余韻に 囚われてしまい、彼女に「香駿」を 破壊されてしまった。そのまま彼女の 盾による体当たりの餌食となり、 記憶がなくなってしまうのだ。 3-5 ⇒ http://blog.daletto.com/article/qdamfve700/20090122.html
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(更新 2009年4月11日 (土) 19時49分) / |
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2009年1月8日 (木)
Quest for Xanadu 3-3
Bewitching Moonlight in Deeply Midnight #3 静寂なる海を渡り歩き、火の海をオアシスで やり過ごす。それがオリビアさんの立てた プランだ。一日目の夜は何事もなく過ぎて ゆき、目的地のオアシスにたどり着いた頃 には東の地平線が明るく輝きだす頃だった。 ラクダたちの手綱を樹に縛り付け、二人で テントを張り、その中に氷結晶を敷き詰めた。 しばらくすると、二人の体温で蒸し暑く なっていたテントの気温が下がり、寝る には最適の温度となった。テントは生憎 二人がやっと入れる位の小さく、ベッドの 持ち込みも適わなかったので、二人で 一緒に寝る布団というものを被って寝に 入った。二人で一緒に寝るのは母親と 一緒に寝て以来だ、という話をオリビアさんに した。 「そうか。君にはお母さんがいるのだったな」 良く考えて見れば、俺の話を彼女にした 覚えがなかった。それに、お互い酒の酔いに 任せていたところがあったので、例え俺が していたとしても、うろ覚えで終わっていた かもしれない。 「そうか・・・。それでザナドゥ探索に 賛同してくれたのか」 母が病気で、治療薬を探して旅に出た事を 話した。話す俺も俺だが、聞き手のオリビア さんはオリビアさんで、話を引き出すのが 上手く、ついこれまでの経緯を長々と話して しまう。そして今回の旅には万能薬となる 薬を捜し求めるその影で、どんなモンスターにも 負けなかった母親が、日に日に弱っていく 姿を見たくない為に逃げ出したのでは ないかと、自問する時もある。すると オリビアが小さく微笑んでこう言ったのだ。 「君にとって、お母さんを残し旅に出る事が 後ろめたかったのだろう?それでも お母さんは君の背中を押してくれた。 旅は人を大きくしてくれるから、お母さんは 自信を持って君を送り出したんだ。もっと 世界を見て欲しかったんだよ」 オリビアさんのこの言葉は、俺の心に染み 込むように強く響いた。まるで母の言葉 そのものに聞こえてきて嬉しかった。すると、 彼女は身体を寄せてきて抱きしめられた。 「慰めてやる。私も寂しい夜はお師様に こうしてもらった物だ」 そのお師様とは何者なのかと、オリビアさんに 尋ねた。 「両親の居ない私にっては、父のような人だ」 オリビアさんは腕に力を入れると、俺の顔が 彼女の胸に埋もれる。 「ほら、こうすると気持ちがいいだろう」 薄着のせいか、彼女の乳房の形がはっきり とした弾力で感じ取れた。そして「ドドブランゴ」を 討伐し終わった後、母に抱かれた時の事を 思い出した。暖かくも落ち着くような、 人肌の温もりがこんなにも愛おしいものか。 俺も彼女の背中に手を回して抱きしめた。 完全遮光の分厚いテントで、隙間から差し 込んでくる僅かな光を頼りに、オリビアさんの 顔をうっすら見いだす。彼女の顔を見上げて、 気持ちいいかどうか尋ねた。 「うん、私も気持ちいい」 彼女は微笑んでいる。 「だがな、汗まみれで申し訳ない。もっと 綺麗な身体で抱きしめてあげたかった。 ・・・だから泣くな」 いつから涙が流れたのだろう。でも単純に 嬉しかったのだ。今まで当たり前のように 母と居て、疑う事無く自分の家が在る。 そんな人間が旅をすると、その人格を大きく してくれるのは間違いない。ただ、どこへ 行っても一人。自分に居場所など無いことを 痛いくらいに感じてしまう時がある。 「お母さんが恋しいのか?」 違う、と俺は言った。でも故郷【くに】が 恋しいかもしれない、と言った。すると オリビアさんは少し悲しい声で俺に言ったのだ。 「君が羨ましいよ、私に本当の家族は 居ないからな・・・」 ぎゅっと抱きしめられた後で、オリビアさんは 我に返った様子で、改めて俺に言った。 「なんで言わなくて良い事を言っちゃうん だろうな・・・。そのように訓練を受けて きたのにな・・・」 今までつっかえていた何かが壊れたかの ように、オリビアさんが自分のことを話し 始めた。 「私はな、戦争孤児なんだ」 何処の戦争かは分からなかった。強大な モンスターが分布する世界と言えども、 人間もまた敵に成り得る世知辛い世の中だ。 近年で国同士の大きな戦争は聞かないが、 伝えられる事のない国の内乱によって、親が 殺されてしまうケースがオリビアさんのようだ。 妹と共に泣いていたところを、ある傭兵、 後の「お師様」に拾われて「一人でも強く 生きていける」事を目標に、仲間たちと 共に強くなっていったそうだ。 「だから、本当の親の温もりというものを 知らない。私がこんなに硬く冷たい喋り方を するのも、幼少の頃から大人に混じって武の 鍛錬を受けてきたからなんだ。もちろん 生きる為、妹を守る為だ」 俺は今まで、自分を不幸だけど強い人間 だから、今を生きていられるのだと思った。 でも俺以上の物を抱えているのはオリビアさん から見たら、単に同情されていただけに 過ぎない。この程度で慢心が生まれて しまう俺など、駄目な人間だ。吐き捨て るように言うと、オリビアさんが俺の頭を 撫でてくれた。 「あなたは母親想いの良い男だ。マザコン でもないし、逃げてもいない。一生懸命 お母さんを助けようとしている。誰も ・・・少なくとも私はそのようには思わない」 俺は顔を上げて、オリビアを見た。 「見つかるといいな、万能薬」 オリビアはにっこりと微笑んで俺に言うと、 俺も微笑みを返す。 「どうした?私が笑うのがそんなに おかしいのか?ん?」 俺はオリビアから目を逸らしたが、そう 簡単に逃がしてくれなかった。手を頬に あてがって無理やり顔を起こすのだ。彼女の 柔らかい手がなんとなくくすぐったくて、 でもずっとそのまま触っていてもらいたい感じ。 「目を逸らすのはずるいんじゃないか?」 俺は今の気持ちを率直に彼女にぶつけた。 ずっと見ているのが恥ずかしくなるのだ、と。 「ふふ、可愛いな」 そしてそのままオリビアの唇に目掛けて、 そっと俺の唇を重ね合わせた。心臓が飛び 出すのではないか、と言うくらい鼓動を 高鳴らせている。俺の気持ちは、もはや はち切れんばかりだ。 「オリビア、好きなんだ。最初に会った時から」 震える声で囁く様に言った。 「そうか・・・」 しばらく困った様子のオリビアだったが、 照れ臭そうにこう言った。 「好きと言われたのは久方振りなんだが・・・」 一方俺は、先程から感じていた彼女の 綺麗な指先が、背中を走るとまるで電気が 流れたかのように甘い痺れに襲われる。 俺も彼女の背中を優しく、軽い羽のように 撫でてあげた。すると彼女は、一瞬だけ甘い 声を上げて、息を漏らした。 「私もあまり人に触られ慣れていないから、 優しくしてくれ・・・」 長く情熱的な昼が暮れ、静粛なる夜の帳が 下りていた。オリビアはまだ布団の中で すやすやと寝息を立てている。寝起きで 身体が冷え切ってしまうので、俺は オリジナルの「ホットドリンク」を 作っていた。ふと空を見上げて、星空を 眺めた。「ルプス村」は山の上なので、 満天の星空を望む事もできるが、天候が 悪い日も多く、毎日というわけには いかない。しかし「セクメーア砂漠」 では毎日燦然と輝く星空を臨む事が できるし、流星が連なって空を翔る 天体ショーも開催している。本当に ロマンチックな場所だ。 「宵空なんか見上げて、どうしたんだ?」 オリビアが目を覚ましたようで、テントから 出てきた。俺はおはよう、と挨拶を すると、彼女も挨拶を返してきた。 「まるで・・・君のようだな。この夜の空が」 確かに、俺の名前ノーチェスは闇という 意味がある。 「こんな話を知っているか?テオ・テスカトルと、 ナナ・テスカトリ」 炎王龍と呼ばれる古龍「テオ・テスカトル」は 赤きたてがみに赤き衣に守られし、 炎を司る伝説の龍。炎妃龍「ナナ・テスカトリ」は 青きたてがみに青き衣に守られし、 「テオ・テスカトル」の妃に当たるつがいだ。 「テオ・テスカトルは昼の化身で、 ナナ・テスカトリは夜の化身と 言われている。つまり、君はナナ・テスカトリに 通じる物があるとも言えるわけだが」 話がさっぱり見えなかったが、 結論としてオリビアは言った。 「彼女の蒼い炎は、夜天誘う魔性の炎。 『夜【よう】さりの蒼炎』と言われている」 俺は再び夜空を見上げた。 「確かに夜は暗く、本能的に忌むものだ。 それでも、君はあまりに星空の素敵な夜に 生まれたから、その日のことを忘れない ために、君の両親がつけた名前なのだ。 自分の子供に忌まわしい名前をつける 親など居ない」 俺は手製の「ホットドリンク」を オリビアに渡しながら尋ねた。自分の 名前が好きなのか否かを。 「ああ。・・・戦争で死んだ両親が、 私に残してくれた唯一の物だからな」 この人は確かに、俺より大きな物を 背負って生きている。だけど彼女の 内から感じていた力強い物は、前向きに 生きるという強い精神力だった。 俺は彼女に、強いんだね、と言った。 「私は強くは無い。全てを受け入れただけだ」 オリビアは「ホットドリンク」を 口にして、驚いた顔をしたのだ。 「ん・・・美味いな」 もう少しでご飯が出来るから、オアシスで 水浴びしてくるといい、と告げたが、 オリビアは断った。 「暗い中、一人で入るのは気が 進まないのだがな・・・」 と、恥ずかしげに彼女が言うと、 俺も気恥ずかしくなって言葉に詰まった。 気まずい空気が流れると、オリビアは それらしい理由をつけて恥ずかしさを ごまかす様に言った。 「そ、それに、折角だから君に背中を 流してもらいたいのだが・・・」 意外と子供っぽいオリビアがとても 愛おしく思えた。だから、料理が 出来るまでもう少し待つように 言った。今夜はオアシスで釣れた 「サシミウオ」を「レッドオイル」で 下味を付け焼いた物だ。仕上げに 「スパイスワーム」を乾燥させた 香辛料を少しだけ振り掛けた。 肉質の固い「アプケロス」の食事が 多くなりそうなので、体の事を 気遣ってあぶらっ気の少ない物を 食べて置きたかった。ちなみに、 濃い味に慣れてはいけないと思い、 味付けはあえて薄味だ。 「君の料理の腕は大した物だ。 料理人になれるんじゃないのか?」 料理はハンターの母から習った。 それに砂漠の寒い気候に「フラヒヤ地方」の 料理と相性がいいからだ。料理人は 大げさだよ、オリビィ。と言った。 しかしオリビアは「オリビィ」と 言う言葉を聞いたとたん、 飲んでいた「ホットドリンク」を 吹いた。 「な、なんだ。その気恥ずかしい 呼び方は・・・。ならば私も言うぞ、 ノチェ」 負けじとオリビィと言い返すと、 向こうもノチェ、ノチェ、と連続で リズミカルに言い返してくる。 そんな光景がおかしくて、思わず笑った。 「おかしいな、ははははは」 俺はチェスとか、チェス坊と呼ばれた事は あったが、ノチェは初めてで、 なんだか新鮮に感じた。 目的地に到着するまでの間は、ずっと こんな調子だった。俺の今までの 人生の中では比較しようも無いくらい、 満ち足りていた。これが愛なのかと、 心の中で強く信じていた。しかし、 別れの時はあまりに唐突として やってくるのだった。俺も巨大な 機械仕掛けの小さな歯車に過ぎないのだと。 地図通りの場所に到着したのは街を 出てから五日目の夜。前人未到の 伝説の地「ザナドゥ」があった。 だがそこは何かしらの文明があったで あろう、砂に埋もれた古代遺跡だったのだ。 3-4 ⇒ http://blog.daletto.com/article/qdamfve700/20090114.html
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(更新 2009年4月11日 (土) 19時47分) / |
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2008年12月31日 (水)
Quest for Xanadu 3-2
Bewitching Moonlight in Deeply Midnight #2 翌朝。昨日のパブに顔を出し、オリビアさんの 様子を見に行った。すると店主が彼女から言伝を 預かっていたのだった。市場で買出しに行って くるから来るように、と。彼女が寝てしまった せいで、今後どのように砂漠を横断するのか 聞きそびれてしまったから、今日はその準備日と なるのだろうと思った。その足で市場へ赴き、 オリビアさんらしき人物を探していると、衣服屋の 前で品定めをしている姿を見つけた。 「昨日はすまなかったな。感謝する。ちょうど君が 羽織る外套を探していたんだ。ちょっと被って見るか?」 オリビアさんが青黒い外套を中年の女性店主から 受け取ると、傍に来て俺の後ろに手を回すと 肩から掛けてくれた。 「フードも付いているんだ」 そう言って、俺に密着して背中に垂れ下がった フードを頭に掛けてくれた。 「女将、どう思う?」 いいと思うよ、と女将が言ってくれたので、 オリビアさんは有無を言わさず外套の代金を 支払った。 「昨日世話になった礼だ。受け取ってくれるな?」 ニンマリと得意げに笑みを浮かべ、俺に笑いかける オリビアさん。俺はなんだか恥ずかしくなって、 お礼を言ったのだが小声になってしまった。 それからもオリビアさん持ちで、砂漠渡航に 関する品々を買ってもらった。主に 「ホットドリンク」と「クーラードリンク」の 素材だ。砂漠では需要が非常に高い「にが虫」と 「トウガラシ」、「氷結晶」は通常価格より いくらか安い。しかしオリビアさんは大量の 素材を買い付けたようだが、そんなに必要なのかと 確認をした。すると昨日何も話していなかった事を 思い出したようで、お昼を食べながら今後の経路を 案内してもらう事となった。彼女の荷物を持って 付いていくと、また回復薬や保存食などを買い 足した。ちょうど昼時に差し掛かると、 「ジオ・ワンドレオ」の地元料理を食べることに なり、オリビアさんに案内されるままにその 店に入った。地元でも人気店のようで、店内は 賑わいを見せている。空いている席に通されると、 オリビアさんはキョフテと呼ばれるこの地方の ハンバーグの定食を注文した。肉が嫌いで なければお勧めだ、と言われたので彼女と 同じ物を注文した。それから「セクメーア砂漠」を 渡る彼女のプランを聞いた。 出発は明日の日没後。星や月明かりを頼りに 夜中の「セクメーア砂漠」をラクダに乗り ながら横断するのだ。昼間はオアシスなどで テントを張り就寝する。そんな昼夜逆転の 移動日数は片道で約四日間。何故夜に移動 するのか尋ねたら、暑い砂漠を移動すると体力を 奪われて死んでしまう恐れがあるが、夜の移動 なら外気温が下がっても防寒具で補う事ができる。 更に夜ならモンスターとの遭遇に対して暗い 格好をしているから発見されにくいと言うのだ。 その為にさっき、蒼い外套を買ってくれたのか。 それに北国出身の俺にしてみれば、暑い所は 勘弁してもらいたかったが、防寒対策がばっちりの 「マフモフシリーズ」を持っているので、 夜の砂漠渡航にも都合が良かった。いつもとは 違ったお昼を平らげて、午後からはラクダ屋に 行きラクダを乗用に二頭、荷物運搬用に 一頭手配した。その日はラクダの乗り方に 四苦八苦した。北国出身の俺にしてみれば、 中近東の文化など触れるのすら初めてだ。 俺の乗るラクダの名はレオと言うそうだ。 名を呼びながら彼のご機嫌を取り取り、 四苦八苦しながらもその背を俺に 預けてくれた。久々の達成感に歓喜の声を 上げた時には既に日が暮れており、オリビアさんは 牧舎のベンチに寄りかかって眠ってしまっていた。 俺の大声で目が覚めたようで、辺りを見回しながら 「ああ・・・、寝てしまったのか」 俺は声を上げて笑ったが、オリビアさんは何の 恥じらいもなくこう答えた。 「よく眠てしまったな。普段は熟睡しないから、 ついつい気持ちよく寝てしまった」 思わず拍子抜けしてしまったが、オリビアさんの 口元が綻びた。 「それも君のお陰かもしれないな。感謝する、 ありがとう」 ただ純粋に見とれてしまった。次に発する 言葉が出て来ないほど、彼女の笑顔に惹き つけられてしまった。 「なんだ、そんなにおかしかったか?」 彼女が立ち上がり、俺のところへ向かって 歩いてきた。俺は平生を装って、なんでも ないと告げる。 「そろそろ夕飯にしよう。よく寝たらお腹が 空いた」 オリビアさんはラクダの手綱を握り、そのまま 牧舎の中へ誘導された。 すっかり日の暮れた「ジオ・ワンドレオ」。 オリビアさんはお酒が弱いくせにこの間とは 別のパブに入ると、ビールを注文する。出発は 明日の日没後だが、彼女がグラスを取るのは 些か心配があった。食事が進むにつれて、 気がよくなったオリビアさんは、自分の身の 上話を始めた。故郷に残してきた妹の話だ。 彼女は地元の騎士団長の護衛をやっており、 銃士として優秀な存在なのだという。 その昔、街を火竜「リオレウス」に襲われた時、 騎士団長とオリビアさん、妹さんが活躍した 話は討伐時間が短く、街に出た被害が 最小だったと、歴史に残る快挙だったそうだ。 ハンターズギルドはどうしたとか、出動した ハンターたちの事を聞く前に、俺は彼女の 腕前にただただ感心するばかりだった。 そして夕食を食べ終え、オリビアさんと ほろ酔い気分で店を出た。 「それじゃあ、今夜はここでお別れだ。 明日の夕方、ラクダ屋でな」 オリビアさんは小さく手を振ると、俺も手を振り、 良い気分に任せて冗談を言った。今日の デートは楽しかったね、と。 「ああ、私も楽しかったぞ」 単なるリップサービスだと思ったが、彼女の 笑顔がそれを忘れさせ、幸せを感じさせてくれた。 「おやすみ」 オリビアさんは背を向けて、街の闇の中へと 消えていく。俺はその姿が見えなくなるまで 見送った。 翌朝。酔いに任せて寝ていたら宿の女将に 叩き起こされ、すっかり正午を回っていた。 チェックアウトの時間はとっくに過ぎており、 延滞料金を取る取らないの話にもなったが、 幸い俺が女将の「お気に入り」だったらしく、 それはうまく免れた。しかし、お気に入りって・・・。 ただし、お詫びの意味を込めてランチを食べていく という条件をつけられてしまったが、こればかりは 致し方なかった。そうこうしているうちに ちょうど約束の時間となり、俺はラクダ屋の前に やってきた。ラクダ屋の主人にオリビアさんが 来たかどうか尋ねたが、まだ来ていないという。 さっそくラクダを牧舎から三頭引いてもらい、 荷物をまとめていると主人がこそこそと傍に 寄ってきた。 「なぁ、あんちゃん。ハンターだろ?」 俺はそうだ、と頷いた。 「悪いことは言わねぇ。荷物まとめて、 今すぐこの街から離れたほうがいいぜ」 なぜそんなことを言うのか分からなかったので、 理由を聞いてみた。 「まだ若いあんちゃんだから、おたくさんの 将来のために忠告してやるよ。あのオリビアとか 言う女剣士。あいつはすこぶる評判が悪いんだ。 何があったかは知らねえが、あいつが来てから 地元のハンターたちはあいつを眼の敵にして やがるんだ」 オリビアさんを悪く言う主人に言い返した。 ここのギルドの古い仕来りに腹が立ったんじゃ ないか、と。 「今のギルド長になってから、やり方が えげつなくなったけどな。だがよ、砂漠だから 生半可な奴が来るところじゃねえ。それで ここはうまくいっているんだ。郷に入らば 郷に従え、だ」 主人は言うだけ言うと、また番台に戻って しまった。さっきの話は気になるといえば 気になるが、それよりもここのギルドの体質を どうにかすべきだと思っていた。もちろん こんな下らないシステムは、すで体制が既に 淀んでいる。来るべき時に、新しい風で 全て吹き飛んでしまえばいい、と。 それから直ぐにオリビアさんもやってきて、 出発の準備を整えた。 間もなく日が沈む。冷たく乾いた風が通り過ぎる 「ジオ・ワンドレオ」の外れにやってきた。 オリビアさんが振り返り俺と目を合わせると、 いつでも準備は良い、と力強くうなずき返した。 ラクダのレオのひづめが砂を蹴り、砂漠の海へと 乗り出した。 この時は「セクメーアの女神」の加護など 単なる迷信だと思っていた。だがこの先に 降りかかる生命の危機に、その迷信を信じざるを 得なくなるなど知る由もなかった。 3-3 ⇒ http://blog.daletto.com/article/qdamfve700/20090108.html
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(更新 2009年4月11日 (土) 19時44分) / |