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小説「モンスターハンター【解禁の章】」・第十五話
2008年6月12日 (木)
気が付けば、ウカムルバスは太刀使いの真正面で倒れていた。 見る者の神経を圧迫させるような大きな口を開けて。 眼には既に生気が無い。 そしていつの間にか、吹雪は治まっている。 「…」 太刀使いは武器「鬼斬破」をウカムルバスの剥き出しになった胸の肉に突き立てていた。 これだけの大きな獲物を倒した。雪山の平和を守ったというのに、喜びなど湧いて来ない。 仲間が死んだのだ。自分を残して。 ウカムルバスの攻撃に早く気付いていれば、こんな事になどならなかったのだ。 ハンマー使いは辛うじて避けたが、彼もまた、ウカムルバスを倒すための大タル爆弾に巻き込まれ、死んでしまった。 ガンナーが生きていれば、遠距離から起爆することが出来る。 ハンマー使いが爆弾に跳び込む必要も無かったのだ。
…この感じ。いつしか経験したことがある。 そうだ、あの時。若かった、まだ腕も両方あった時だ。 赤衣の男ともギルドナイツとして同僚であり、ライバルだった頃。 テオ・テスカトルによっての迎撃戦で感じた。
――正装を身に纏って、十人ものギルドナイツが戦闘街に出向いていた。 3つ程の部隊編成をし、その先頭にひと際若い者がいた。 ヴェン。それがその男の名前。 その時、腕は両方"残っていた"。 ランスを自分の前に構え、後ろに3人を連れて門を潜る。 ベースキャンプにさえ熱気が漂っていた。 相当の大きさを持つ個体か、その者自体が強力な者なのだろう。 油断は許されない相手という事は、最初から解っていた。 「俺に着いてこいっ!!到着次第各配置に付け!」 「了解しました!!」 3人は一斉にそう叫び、「隊長」と思われるヴェンに付いて行った。 後ろには今で言う「赤衣の男」も存在している。 二人は腕が立つ凄腕のギルドナイツだった。 他の隊員はそれに安堵し、必ず勝てる、そう思い込んでしまっていた。 そこにギルドナイツ全員が、これから起こる悲劇など、想像もしなかっただろう。 なにせ、迎撃戦は今回が初戦だったのだから。 古龍がなぜ「脅威」と呼ばれるのか、その理由を知らなかったのだから。
十人のギルドナイツは入組んだ細い街道を抜けて行った。 その小さな通り道が行く手を阻むようだったが、幸いこの重装備でもギリギリ通れる物だったので、あまり気にならなかった。 進むにつれ、周りの温度が高くなっていくような気がする。 テオ・テスカトルに近づいている合図だ。 「…いた!!」 小声で先頭のヴェンが全員に止まる支持を送ると、街の壁から様子を伺った。 …そこには、テオ・テスカトルが重い体を持上げて歩いている姿があった。 やはり、かなりの巨体だ。炎の鎧も尋常では無い熱さと範囲をもっていた。 近寄る虫達が無残にも焼かれていくのが解る。 飛んで火に入る夏の虫、とはこういう事なのだろう。 (ここは後ろを向いた瞬間に攻撃した方がいいのかもな…早く倒したいが) ヴェンはそう判断し、テオ・テスカトルが後ろを向くのを待った。 有り得ないほどゆっくり時間が流れる。 ここで逃してしまえば、コイツは街の本部に行って攻撃を開始するだろう。 なんとしてでもここで食い止めなければ… 逸る気持ちを抑え、武器の柄を静かに持って時を見る。 テオ・テスカトルがゆっくり背を向けようと方向転換をし始めた。 チャンスは一瞬。逃したら一方的に攻撃される…最後は死あるのみ。 ヴェンはそうならない様に的確にタイミングを計っていた。 …そして、テオ・テスカトルの尻尾がこちらを向く。 「…行くぞっ!!」 仲間にそう告げると、ヴェンは足音も立てずにテオに突進していった。 それを確認し、九人の兵士も付いて行った。 ヴェンのランス「ナイトスクウィード」がテオの足に突き刺さる。 四本足のモンスターなので倒れはしなかったが、大きく怯ませる事に成功した。 続けて九本のランスも足、首、翼、尻尾に次々と刺さってゆく。 ヴェンを除いた全てのギルドナイツが、その時一瞬の余裕を感じた。 確実に倒せる、と思った訳ではないが、出だしの良さにそれを表面化させてしまったのだ。 ――そのタイミングが悪すぎた。 「やばい!!全員――」 ヴェンがそう言ったのももう遅かった。 全身を刺されたテオは、怒りを露にして、戦いを始めてから僅か数秒で咆哮をした。 全員の耳を針が刺さった感覚が襲う。 「なっ…!!」 耳を抑えるのを忘れてしまい、完全にその声を聞いてしまった者が足を竦ませて体を硬直させる。 ヴェンは何とか間に合ったが、それが今後の彼を変える原因になる。
テオはその後、体にとてつもない熱気を負わせ、口から火炎を放射した。 ヴェンは腹の近くに居たので「髪」にしか当たらなかったが、他の人間はその灼熱の炎に成す術も無く包まれてしまった。 髪の焦げる匂いに包まれながら、ヴェンは絶望を見た。 全員が火炎に焼かれて殺されている! 鎧を通って肉まで浸透するテオの炎は、やがてその体を焦げで一杯にする。 だが、赤衣の男が辛うじてそれに当たらなかった。 でもまだ体を硬直させている。早く助けなければ。 テオ・テスカトルがその火を一回り大きくさせて赤衣の男に向ける!
「うわあああああぁぁぁ!!」
叫ぶことしか、彼には出来なかった。 迫り来る火炎を、見る事さえ不可能だった。 自分が体を燃やされて倒れる姿が脳裏に浮かぶ。
その時、赤衣の男の目の前に人の影が写った。 「くっそぉぉぉ!!」 人影はヴェンだった。 盾を持って、炎を防いでいる。 それは拡散し、周りの空気に取り込まれていく。 盾は鋼鉄なのでほんの少し溶けた程度で被害は済んだ。 だが、盾の合間を通ってきた物がヴェンの左腕を焼き尽くした。 盾を動かしてテオの鼻っ面に当てようと思ったが、それさえも不可能。 もはや腕は使い物にならなくなった。 赤衣の男は衝撃を受けて他のエリアに逃げ込んだ。 一人だけは助かった。だが、今俺が死んだら街はどうなる… そう考えている内に、テオ・テスカトルは飛び掛かりの体制に入っていた。 その自分を見つめる眼光が怖くなって、ヴェンは座り込んでランスを振り回した。 眼を瞑って、何も見ないで。絶対的な恐怖があったから。
グオォォォォォ!!!!!
その声と共に、腕にかなりの手応えを感じた。 テオの腹に、見事ランスの切っ先が命中したのだ。
テオはそのまま自分の後ろに跳び、唸りを上げて力尽きた。 ヴェンはそこから少し時間を置いて、ようやく状況を理解する。 ほぼ全ての兵士が、丸焦げになって自分の周りに倒れ込んでいた。
"自分がもっと早く気付いていれば…"。
そんな感情がヴェンを襲った。
"この短時間に仲間を失った"と。
「――俺はあの時から一人で生きてきた」 ヴェン…それが太刀使いの本名。 あの時の悲しみ、リーダーとして叱るべき事をしてしまったという責任感。 それがヴェンの気持ち、正確、行動を変わらせた。 仲間と楽しみ、ピンチに襲われながらも狩りをしていたあの頃とは、今は違う。 「…もう、俺の行動で仲間が死ぬ所など見たくなかったんだ…」 そう言って、ヴェンは涙を流した。ほんの少しだけ。 「デスギアシリーズ」の布にそれが吸収される。 骸骨のマスクをしていたので見えなかったが、その内は確実に悲しみを堪えて「しかめっ面」になっていただろう。 「…早く街に戻らなければ」 過去を思い、心の中から湧き出る感情を押し殺した。 そしてヴェンは太刀をウカムルバスの胸から抜いて、下山を開始した。
――まだ俺にはやらなければならない事がある。 仲間を、人を守らなければならない。
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今回は質問コーナーはお休みです。 質問がありましたら、前回と同じくドシドシ書いて下さいねw では、次回をお楽しみに^^
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SS:ミラのイラストです^^ どうでしょうか?いいところを表現できたかな? 女性を描くのが苦手な俺には、上手に描けたか分からんのですw どうかコメントをw
(更新 2008年6月12日 (木) 22時49分) / 7 コメント
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